ベトナムの洗骨葬とドブネズミ
ハノイ空港から市内に向かう道路沿いには水田が延々と続く.ベトナムには水田が多い.6年ほど前,ハノイから観光バスでベトナム北部の観光地,ハロン湾へ行ったときのこと,水田の中に棺が点々と並んでいた(写真には写っていない).ガイドによればこれは洗骨葬のためのものであるという.死者を葬った棺を水田に一定期間安置しておくとナマズが食べてくれるのできれいになる.後日,遺骨を取り出して正式に土葬にするという.洗骨には,3年間土葬にした後に遺骨を洗い出す方法もある.ガイドのこのような説明を,そのときは適当に聞き流していたが,その後気になる情報が耳に入った.水田にネズミが多いというので知人が調べたところ,それはドブネズミであったという.もしかするとナマズだけでなく,ドブネズミも洗骨に加わっているのではないか.ドブネズミは泳ぎが得意なうえに肉類を好む.ベトナムにとってこれは許容できる実情ではないと思う.(矢部辰男)

ノスリはネズミを食べ残す
これは小笠原諸島の南島(写真:父島列島に属する無人島)で見たできごとで
ある.2009~2010年ころ,島を訪れたところ,クマネズミやオオミズナギドリの死体がたくさん転がっていた(写真:ノスリに食べ残されたクマネズミの内臓).オガサワラノスリに襲われたものである.島は低木と草原に覆われているので,ネズミを捕らえるのはノスリにとってたやすいことであろう.それにしてもノスリはずいぶんもったいない食べ方をするものだ.餌食のネズミを完全に食い尽くすのではない.
北海道の根室半島沖にあるユルリ島とモユルリ島(これらも低木と草原で覆われた無人島)にも秋ごろノスリが飛来し,春から夏にかけて大発生したドブネズミ(この時期は海鳥たちの繁殖期で,ネズミたちは海鳥やその卵を食べて大発生する)を食い散らかす.これらの死体は腐ることなく雪下に残る.ノスリに襲われずに生き残ったドブネズミたちはこの死体を食べて積雪下で繁殖すると推測される.雪下で繁殖したネズミたちは春から夏に海鳥を襲って繁殖する.ドブネズミたちはこんな,春~夏と冬の繁殖サイクルを繰り返しながら北の無人島に生き続けるのだ.(矢部辰男)
ノスリのペリット

これは小笠原諸島の西島(父島列島に属する無人島)の話である.草原に毛の塊が落ちていた.ノスリのペリット(消化されずに吐き出された物)である.ペリットを広げてみると,ほとんどがクマネズミの毛で,そのほかに歯や爪(下の写真右上)も出てきた.(矢部辰男)
